ニコラスにイヅナは人狼のことを話してみた。しかし、ニコラスに人狼の時の記憶はないようで、「人狼が本当にいたら、まるでファンタジーの世界にいるみたいだね」と笑って返されてしまったのだ。

「イヅナ、あいつが犯人なんだぜ。アレス騎士団として見逃すわけにはいかないだろ?」

「また満月の夜になれば、彼は人間だったことを忘れて人狼になり、人を襲う。そうなる前に止めるのが僕たちの使命だよ」

レオナードとヴィンセントに言われ、イヅナは「そんなこと、わかってるわ!」と大声で言い、ようやく二人の方を向く。二人の方を向くと、アレス騎士団として彼を倒さなくてはならないんだという現実を突き付けられ、目の前がぼやけた。

「でも彼は、人間に戻っている時は自身が人狼であることを忘れているのよ?人間の時はあんなにも優しくて、生徒思いで、いい人だわ。そんな人を殺すなんてできない!」

彼を慕う人はきっと大勢いる。そんな人たちが失踪・惨殺事件の犯人がニコラスなど、誰が信じるだろうか。イヅナの頬に涙が伝う。