あやかし戦記 葛藤の炎

ジェイムズはそう言った後、机の上に何枚か置かれた書類に目を通し始める。もう君たちと話すことはない。早く任務に当たってくれ。そんなオーラが漂っていた。

「……ありがとうございます。失礼します」

イヅナとヴィンセントは何とか笑顔を作りながら、レオナードはどこか嫌そうにお礼を言い、村長の仕事部屋を出る。

「ああ〜、もう！！何だあのクソジジイ！！」

部屋を出た直後にレオナードが顔を真っ赤にしながら大声で言い、「馬鹿！」とヴィンセントが慌ててレオナードのお腹に拳を入れる。レオナードは今度は顔を真っ青にさせているが、同情できない。

「レオナード、私たちのことを信用してもらえないのは当然よ。まだ新人なのは事実なんだから」

「もう余計なこと言わないで。アレス騎士団の一員だってバレたら、僕たちはもちろんツヤさんたちにも迷惑がかかるんだから」

イヅナとヴィンセントはそう言いながら、フラフラするレオナードの体を支え、ジェイムズが教えてくれた宿に向かって歩く。明日から早速調査を始めるつもりだ。

夕暮れがどんどん近付き、道を歩く人々の表情が少しずつ怯えたものになっていく。家でリラックスができる夜を怯えて過ごさなくてはならないのは、かなりのストレスだ。