列車に揺られること三時間、レトロな雰囲気赤レンガの駅を出てさらにバスに揺られること約三十分、「ようこそ、ホーリー村へ」と書かれた可愛らしい看板が現れ、人口五千人ほどの小さな村に入る。

「ここがホーリー村……」

のどかで、イヅナたちが暮らしている街より自然が多い。一見、失踪・惨殺事件など恐ろしい出来事とは無縁のように思える。

「おや、見かけない顔だね」

イヅナたちが立ち尽くしていると、レタスなどの野菜をたくさん積んだ二台を運びながら五十代ほどの男性に声をかけられる。男性はタオルで汗を拭きながら、イヅナたちを少し警戒したような目で見ていた。

「僕たち、海の向こうから来ました。この村の村長さんに呼ばれたんです」

ヴィンセントがイヅナの前に立ち、ニコニコと笑いながら男性に言う。男性は「そうか。君たちが村長の友達のお孫さんだね」と警戒の目を緩め、微笑む。アレス騎士団の一員が来ると知らされていないようだ。公になるのは困るため、村長の配慮にイヅナは感謝する。

「とうもろこし食べるかい?生でもおいしいよ」

ニコニコ笑いながら男性がとうもろこしを差し出し、イヅナとヴィンセントは断ろうとしたのだが、レオナードが「ありがとうございます!」と笑顔で受け取ってしまったため、二人もお礼を言いながら受け取る。