【短編】貴方だけを愛しています

「私には、お父さんとお母さん。お兄様とたっちゃんが居た。その子は……?」



「…………、」



「あんたたちのせいで、私は大切な患者さんを、最期まで看てあげられなかった……。私の事はもう良い。捨てられた過去なんて、もう良い。ただ、子供を悲しませる事は、許さない。的渕家も纐纈家も同じ…… 。女性へと付き纏いとか、女性がYESと言わない限り犯罪。2人次第で……私は電話する」



「待って!;;待って、お願い、唯来っ!;;」



「私は、過去よりたっちゃんとの幸せと、子供たちの笑顔を守りたいのっ!!この世界に生を受ける資格なんてない私を、好きだと言ってくれて、愛してくれた人たちを、あんたたちは苦しめた……っ!!本当なら今すぐにでも通報しても良い。けど、お腹の子に罪はな――…っ」



「もう良い、唯来。苦しかったのは、俺たちだけじゃないんだ」



「咲来……」



「はい、お兄様……っ」



「お前にも、謝罪する口があるだろ。もちろんお前だけじゃない。的渕と纐纈の両家が唯来に謝ってから、お前たちの再スタートが切られるんじゃねぇのか。2人が子供にとってどんな親になるのか、その答えはあいつとお前が考える事だけどな」



結婚を望んでは居ない。

でも、慧斗さんとどうして行くのか答えを言わない咲来に、“110”と入力したスマホ画面を見せながら問う。