【短編】貴方だけを愛しています

「葉山とは、終わりです」



「ですが、そちらはうちの銀行がなければ――…」



「【央河(おうが)銀行】が就きます。母の親戚で小さなところですが、うちとの関係がわかれば、じきに拡大するでしょう」



「「「『――…っ!』」」」



たっちゃんの賭けにも似た動きに、私まで驚いてしまう。



「ちなみに妻を通し、既にいくつか支店や出張所の建設も始めてる」



「金は確かに何でも買える。葉山から買わずとも、単価が高くても他に土地はある。でも、それを捨ててでも、俺たちには守るものがある。それに手を出そうとしたらどうなるか……よくわかっただろう」



資産的には葉山が上でも、お母さんの親戚が営む銀行との取引において、頭を下げる側となったお父さんたちにとって、プライドを捨てたも同然の事だろう。



「……っ……」



何故、身内に銀行経営をしてる人が居るのに、的渕を選んだのか。

婚姻前からの繋がりってだけではない。

それなのに……。



「あの、主人のホテルは……っ」



「――おい」



「「「『――っ、』」」」



「人の敬意を、無駄にするつもりか」



「……っ!;;」



「唯来を産んでくれて感謝を言った情けを、仇にするのか」



このタイミングで、たっちゃんを逆なでした纐纈の母。

私はともかく、子より、ホテルとは。