【短編】貴方だけを愛しています

「唯来……勇気あるか」



「…………?」



「お守り」



「あぁ……そういう……」



「「「『…………?』」」」



前を向き、“勇気”と言うたっちゃんに、首を傾げる。

でも、その意味を真っ直ぐ目を見て言ったたっちゃんに、頷き、コートを脱ぎ、セーターの裾に触れる。

震える手でセーターを脱ぎ、タートルネックのヒート素材のインナーを掴むと、たっちゃんが手伝ってくれる。



「――っ!!」



「戸籍だけでなく、これも俺の女と言う証になると思うが――…」



「そ、そんなモノはいつか消え――…」



「消えたらまた付けるだけだ」



「…………っ、」



「他の男が付けたキスマークが溢れた女を、お前は抱けるか?」



「…………」



「息子は黙ったな」



キャミソールは着たままでもわかるキスマークと、屈しないたっちゃんとは逆で、慧斗さんは諦めを見せた。

たっちゃんを見ると頷く為、服を着直すと、テーブルにクリップで纏められた書類が投げ置かれた。



「次は、息子に加担した、親バカなあんたらにだ」



「「…………っ!」」



「あいつが諦めたからって、俺は許しはしない」



“何で我々にも”と言いたそうな頭取ご夫婦に、たっちゃんは淡々と言いながら、私が着忘れたコートを掛けてくれる。