【短編】貴方だけを愛しています

お母さんでもお兄様でもなく、珍しくいきなりたっちゃんが前に出て、お金をパラパラと撫でる姿に、みんなが不思議そう。



「はい、退いた退いた」



「んん゛……(お兄様)!」



「俺らは来た。唯来が人質の必要はないな?達也のスイッチがいきなり入っただけでなく、バロメーターも振り切っちゃってるんだよなー。ちなみに、俺も。オリンピックの開催年数以上にキレないヤツと、アホがキレたらどうなるか、考えて動けよ」



「「「「…………、」」」」



「的渕より、まともで何より」



「ん゛ーっ!!;;」



「もう、大丈夫だ」



「たっちゃん……っ」



「安心しろ」



お兄様によって解放される身体。

私とお兄様を押さえてた的渕家の護衛は、お兄様の凄みに大人しく離れた。

たっちゃんの胸に飛び込みに行くと、固く縛られたハンカチは外され、抱き締められる。



「傷付けられたわね」



「はぁ……」



お母さんが私の口元が赤くなってるのか、撫でながら言うと、たっちゃんが私の顔を慌てて確かめて溜め息。

ーーバサ…ッ



「「「『…………っ!?』」」」



そして、テーブルに積まれた札束を、払い落とした。