「唯来を、返して下さい……っ」
「このままでは娘たちが、的渕家に……」
「やっぱりそれか」
「貴方たちは、どんな時も、唯来を道具にかしか見てないのよね」
なっちゃんが亡くなって数週間。
仕事へは行くものの、落ちた気分はなかなか戻らずに時間だけが過ぎて居た。
2月も半ば。
気分転換になればと、バレンタインも兼ねてお母さんと、一夜にして何故かお兄様と復縁した莉帆さんと絞りクッキーやトリュフチョコレートを作ってると、纐纈の両親がやって来た。
話を聞きながらも、チョコレートを丸めてると、私を返せと言う話に。
しかしそれは、咲来たちを守る為。
もうこんな事で心は折れる事はない。
「「「『…………?』」」」
「2人は、的渕さんたちから何と言われてたんですか?尾行一つにしても、何かしら言われて来たでしょう」
「それは……っ」
「唯来を探れば、唯来を連れて来ればと、金でも積み上げられたんですか?」
「「…………っ、」」
「葉山が離れた今、うちより高い金利で土地を買い、ホテルを増やさないと、停滞か、衰退か」
隣に居たたっちゃんが徐に立ち上がり、リビングへと行き、お母さんと入れ替わりにソファーへと座り、口を開いた。

