莉音は父の車に揺られながら昨日の動画の続きを見ていた

エージが最近出たばかりのモンスターを狩るゲームを他の実況者と3人でプレイしている動画だ

4時間近くの生配信のアーカイブを見つけてがっかりしていた

「何で寝ちゃうのよ私のばかぁ」

昨日の生配信を見る為に夜更かししていた莉音だったが
生配信が2時間経つ頃にはエージの声をBGMに夢の中へと落ちていたのだった

「ま、それのおかげでエージ君の夢も見れたし
あぁー幸せだったぁ」

エージと類は今人気絶頂中のゲーム実況者虹色チャンネルの2人だ

特に類の方は顔出しも偶にある為そのジャニーズも顔負けの甘いルックスに余計にファンが増えているのだろう

一方のエージは顔出しN Gだ

ファンの中では類がイケメンすぎて出てこれないだけだと言う人もいるが

莉音はそんな事どうでも良かったのだ


莉音が惚れているのはその声


甘く響くような低めの声
少し掠れるようなその声は色っぽく
莉音の鼓膜を揺らす


「はぁーエージ君になら何されてもいい」


キキーーーーッ


車の急ブレーキにより莉音の体は前に飛び出しそうになったがシートベルトを着用していたため何とか飛び出さずに済んだが


「パパ?どうしたの?」

運転している父へと批難する莉音

冷や汗を掻きゴメンと謝る昌幸
「ごめん怪我はない?」

そう聞くや否や顔を引き攣らせて
「そ、それはそうと、そその、エージ君とい、言うその子は、、、か、、、彼氏なのか、、、、???」


明らかに動揺しすぎて噛みまくる昌幸

「何を言ってるのパパ私に彼氏なんてできるわけないよ」


と平然と答える莉音

先程の衝撃で座席の下に落ちてスマホを拾い父にその画面を見せる


「、、、ゲーム?」


画面だけでは何の事かさっぱりわからない昌幸が首を傾げる

「あ、イヤホン挿したままだった」

そう言ってイヤホンをスマホから引き抜くと
ゲーム特有の荒々しい攻撃音やモンスターの鳴き声などの音と共に凛とした聴き心地のいい男の子の声が聞こえた


「この人ゲーム実況者さんなんだけどね」

そう話だした莉音にホッとした昌幸は
ゆっくり車を走らせた

うんうんと莉音の話に耳は貸している昌幸だったが正直話の半分も理解はできていなかった。

それでも莉音は語り続け

昌幸は彼氏でっはなかったことに安心し
これから先もそんな事にはならないような相手だったことに安心して莉音の話を聞いていたのだった。


この時の昌幸は夢にも思わなかったであろう

一人娘の恋がもうすぐ始まろうとしていることに