慌てて出ると「彩夜架ちゃん、昼休みにごめんね」と、温度を感じる声が聞こえた。



「牡丹くん。今ちょうどゆるるとごはんを食べてるところだよ。替わる?」


「いや、ゆるはいつでも会えるからいいよ。それより週末空いてない?気になる店があるんだけど男一人じゃ入りずらくて、付き合ってほしいんだよね」



なるほど。これは、誘うって言ってたやつか。



「だけどわたしじゃなくても…」

「あ、もしかして予定ある?」

「バイトが、17時からあるの」

「じゃあそれまで時間ちょうだい!また連絡する!」



そう言って切られてしまった。遠くで鐘が鳴っていたから牡丹くんの学校はお昼休みが終わりなのかもしれない。


どきどきしてしまった。男の子と電話するなんてあまりしたことない。


時間ちょうだいって、言い方、可愛いって思った。



「牡丹くんからだった…。デートに誘われたかもしれない…?」


「聞こえたよ。デートでしょ。そのうち育まれて恋がわかるかもしれないね」



なんと。牡丹くん相手?なんだか夢のような話。



「ゆるると真篠くんの友達なら安心だけど…。わたしといて楽しいのかなあ」



心配になってきた。デートなんてしたことない。デートって付き合ってなくてもしていいの?どんなことを話したらいいのかな。



「私、恋はしてるし、うまくいってはないけど、それでも彩夜架は大好きだよ。楽しいよ。だから、大丈夫。いってらっしゃい」



まだ知り合って間もないのに、なんて優しくて可愛くて穏やかなことを言ってくれるんだろう…!


ぎゅっと抱きしめると頭を撫でてくれた。


癒される…。やっぱり、友達が一番だよ。一番大切。

真篠くんみたいに周りを傷つけたりはしたくない。