わたしが、きみのせいだって思っていたらどうしよう…って不安もあったのかもしれない。だってちょっと震えてるんだもの。意外と小心者だったんだね。


知らなかったことを知っていくたび、好きって思う。

底なしの気持ちが、恐ろしくて、だけど抜け出せない。


どんな表情をしているか見たくて距離を開けると、頬をぐにっと掴まれた。



「にゃにするの!?」

「悲しい顔してるから崩したくて」


それはそっちだって同じなのに。だから同じことをしようと手を伸ばしたけど届かないー!くやしー!

背伸びをがんばるわたしを見て、真篠くんはやっと少し笑った。


その表情がだんだんと近づいてくる。


……これはまさか。

まさかなの!?

わー真篠くんってまつげ長いなあ髪さらさらだなあなんだか良いにおいもするんだよなあいっつも。


「ぶははっ」


あと数センチの距離まで来て、彼は吹き出すように笑い出す。


「え、なに…」

「いや目見開いて呼吸止めてるからおもしろくて」

「呼吸は止めるでしょ!!」


目は確かに閉じるべきなのかもしれないけど、なんか見入っちゃって。

真篠くんって肌も綺麗でうらやましんだよね。マスカラもまつエクもなしでその長さもずるいよね。


「鼻でして。しんじゃうよ」

「鼻!?それじゃあ鼻息うるさくなっちゃうよ!」

「くくくっ」


背中を丸めて小さくなって、笑顔を隠すようないつもの笑い方。


「というかね、突然は緊張しちゃうからだめだよ!」

「先に言ってたってむりだろ」