「なんだよ。邪魔したんなら責任とれよ」

「わたしじゃ、役不足でしょ…」


「だからさ。おれは、誰でもいいんだって」



ちがうでしょ。

そんなこと、本当はないでしょ。

少なくとも、わたしじゃないんでしょ。


わたしのことなんてなんとも想っていないんでしょ。



そう考えるとどうしてか涙が頬を伝った。


なにこれ。

何の涙?



「好きな人じゃなきゃ…こんなこと、しちゃだめだってば」



それはわたしの決めつけかもしれない。

だけどきみの場合、こんなんじゃいつまでも自分を傷つけるだけだよ。

自分でもそれはわかってることなんでしょ。


それなのに。…こんなの、ひどいよ。



「はっ…。じゃあコレは……この気持ちはなんなんだよ」



乾いた、笑い声。

ぜんぜん笑ってない。

顎から手が外れて距離が生まれる。


さっきまであんなに近かったのに、きみの言葉の意味もわからないなんて無力だ。


傷つけたくない。味方でいるって約束した。だけどどうしてもきみとはうまくいかない。



「おまえなんて一生好きなやつできなければおもしれーのに」


「な……なんて囁きなの……本当にわたしのこと庇ってくれた子なの?」


「うるせえ。帰れよ」



方向同じなんだから駅まで一緒に帰ってくれたっていいのに!なんで!



「もう!悪いコ!!」



勝手に不機嫌で、知らないところで守られてそのままお礼も言わせてもらえないところだったのに、けっきょく知っても言えなかった。


真篠くんはわたしの気持ちなんて、ぜんぜんわかってないんだ。