話しながら歩くこと15分。
駅に着くと、みんな同じ方向の電車に乗り込んだ。
電車は16時台は比較的空いている。
巽先輩の隣りに座ろうとすると、座る瞬間に哉太先輩が私の手を握って自分の隣りに引っ張った。
「わっ。」
驚いて、思わず声が出る。
「え、つまずいた?大丈夫?」
何も知らない巽先輩が、私の顔を覗き込む。
哉太先輩は、繋いだ手を離さないまま、浅く腰掛けて、軽く胡座をかいて座った。
私達の手は、哉太先輩の胡座の陰に隠れて、巽先輩には見えていない。
繋がれた手の意味もわからないまま、私だけが口から心臓が飛び出そうな緊張と闘っていた。

