紹介をさらっと終えると、みんな注文したご飯を食べ始めた。
哉太先輩と麻理はテンポ良く会話が弾んで、たまに巽先輩がツッコミを入れたりしている。
私はもちろん傍観者。
・・人がもし生まれ変われるなら、次はせめてもう少しコミュ力高い人間を希望する。
ただ、たまに巽先輩がちらちらこちらを見ているような気が・・気のせい?
目の前の席だから視線くらい合って当然だけど・・。
みんなが食べ終わりそうな頃、私はまだ半分程度しか進んでいなかった。
「ごめん。それ、苦手だった?」
不意に巽先輩が声を掛けてきた。
「いや、あの、全然、好きですこれ!」
本当に、おかずは好きだ。
けど、緊張して喉を上手いこと進まないだけ。
「お前ら、先戻れば?俺らまだかかるから。散れちれ。」
巽先輩が、哉太先輩と麻理を手で追い払うようなジェスチャーをする。
食べ終わって手持ち無沙汰になっていた2人は、「じゃあまた一緒に飯食おうね!」とあっという間に去っていった。
「まだまだ時間あるし、俺らはゆっくり食おーぜ。」
みんな自分のペースで食べていく中、巽先輩だけが、時折箸を休めていて、まだ1/3程残っていた。
たぶん・・
「すみません。私に合わせてくれたんですよね?私食べるの本当に遅いんで、巽先輩も先に行って大丈夫ですよ?」
申し訳なさと気まずさで心の中はぐしゃぐしゃだった。
てか麻理まで帰るなよ、人見知りなの知ってて置いてくなよぉぉ・・!!!
「俺がゆっくり食べたいから。いつも哉太といるとうるさくて。たまにはこうやって静かにゆっくり食べたいじゃん。」
隠そうとしても、巽先輩の言葉には優しさが滲み出ていた。
神対応ってこういうことでは・・。
もはやオーラが神々しく見えてきた。
「・・ふふ。ありがとうございます。」
こんな優しい男子って、いるんだな。
さすがオカンとか言われるだけある(とは本人には言えない)。

