電車は40分に1本しか来ない、



ローカルバスが市民の命綱。




この田んぼだらけの田舎町で、みんながやることなんて1つだ。




唯一の娯楽、“恋”。










ドンッ


「おっは〜!!」




早朝、後ろから私の首に両手を回して、勢いよく抱きついてくる男が一人。





「お、も、い〜!!」


背中に体重を乗せてグイグイ押してくる。




「あ〜、朝から気持ち良い〜。」




お隣りに住む幼馴染の光(ひかる)は、毎日私と同じ時間、朝6時に家を出る。





「ちょっと、光、逆でしょ!光のが大きいんだから、寄り掛かるなら私の方でしょ、潰れちゃうよ!!」



175cmの巨体を、150cmの私が両脚で踏ん張りなんとか押し返す。




「いいよ?じゃあ俺がおんぶしようか?はい。梨沙(りさ)乗って〜。」



そういうと光は、
さっと私の前に回り込みしゃがんでみせる。





なんとフットワークの軽いことか(若い)。



「はぁ〜。なんか、朝から疲れる。」





無邪気な光を目の当たりに、頭を抱えてため息を吐くと、




「ひっど。彼氏に向かってそれはなくない?」



眉を下げ、子猫のような表情でこちらを見つめてくる。