「全て」とは言ったけど、わたしはそのなかでも例外なのだろう。

どんなにイケメンだとしても年下にはよっぽどのことがない限りときめかないのだ。

「王子じゃなくて、天音(あまね)って名前ですってば」

「王子でいいじゃない。ファンクラブもあるって店長から聞いたよぉ」

「…店長。凛々サンには話さないでくれって言ったじゃないですか」

「悪い悪い。ついこの口が滑ってな」

「なんでわたしには内緒なわけ?ちょっとショックなんですけど」

自分では王子に懐かれていると思ってたんだけどな…。

酔いが醒めてしまった。

コンビニでビール買って飲み直すかな。

「じゃ、帰るね」

「ちょっ、凛々サン!送りますって!」



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この時間は流石に人通りも殆どなくて、夜風が火照(ほて)った顔を撫でてとても気持ちがいい。

ルンルンでスキップでもしちゃいたい気分だ。

そのまま吸い込まれるようにコンビニに入り、ビールとチューハイと乾き物のおつまみをカゴにポイポイ入れていると、

「凛々サン、まだ飲む気ですか…」

背後からげんなりした声が。

「王子。まだ居たの?」

「それ酷くないですか?」

「うちすぐそこだからもう大丈夫よ。ここまでありがとっ」

カゴを持っていない手をひらひら振れば王子はますます顰(しか)めっ面になって、

「…凛々サン。俺ん家、凛々サン家のふたつ隣です」

盛大な溜息を吐いた。