「……っ」
「おい、リリー? なにを泣くんだ」
 なぜか勝手に涙が溢れて止まらない。
 パパが慌てて拭ってくれるけど、涙は後から後から零れて拭き取るのが追いつかなかった。
「……ふむ」
 パパは途中で拭うのを諦めて私を抱き上げると、頭を自分の胸に凭れさせる。そのまま溢れる涙を自分の胸に吸わせながら、ほんの幼子にするように、ゆらゆらとあやし始めた。
 普段なら、もうそろそろ寝る時間。もともと今日は朝から気を張り詰めて過ごしていたし、その上一日の終わりにこんなふうに泣いちゃったものだから、もうクタクタ。
 なにより、パパの抱っこが最高に眠気を誘う。
 ……ううん、ダメ。ヴィオラのお見送りもせず、このまま寝ちゃうわけにはいかな……ぐぅ。
 パパの心地いい揺り籠に揺られていれば、いくらもせずに上下の瞼がくっついた。目を瞑る直前に見たのは、パパの優しい微笑と柔らかに私を見つめる萌ゆるグリーンの瞳。それらを網膜上に刻み、私はとても満たされた思いで眠りについた。