「待って? パパに謝ってもらうのはおかしいよ。だって、私が魔力遊びでお屋敷をもわもわにしちゃったのは事実だもの」
「だが、俺が言葉足らずだったのもまた事実だ。魔力を正しく使うことは君自身のためにも、そして、他の人たちのためにもなる。今夜、ボヤを未然に防いだのは君の手柄だ。よくやった、リリー」
 パパは私の頭をポンッとひと撫でし、言葉の最後をこんなふうに締めくくった。
 魔力を容認し、あまつさえ今夜の私の行動に労いの言葉までくれた……。
「……私のパパが、パパでよかった」
 自然とこんな言葉が口を衝いて出ていた。
 耳にしたパパは目を見張り、次いでスッと細くした。
 細められた目と、僅かに上がった口角。もともとあまり表情を動かさないパパだから、今も目に見える変化はこのくらい。だけど、パパの醸す空気がとても温かで柔らかに感じるのは、きっと私の思い違いではないはずだ。
「俺もだ。君のパパになれてよかった。リリー、君は自慢の娘だ」
 耳にした瞬間、眦から熱い滴りがポロポロと珠になって頬を伝う。