……そう。私こと、闇魔力に傾倒した極悪幼女リリー・ヴィッドランドは、シナリオが進行すると、義父であるアルベルト様の手で殺されてしまうのだ――!!
　ゲーム世界におけるリリー・ヴィッドランドの立ち位置が一挙に脳内に蘇り、私は「ヒィッ！」とひと声漏らし、白目を剥いて卒倒した。
「危ないっ!!」
　後頭部が床に叩きつけられる寸前で、伸びてきた腕にグッと抱き留められる。心配そうに私を覗き込む新緑みたいなグリーンの瞳が息を呑むほどに美しくて、少しでも長く見ていたいと思ったけれど、願い虚しく瞼がくっ付いてしまった。

＊＊＊

　もう何年も会っていなかった兄侯爵が、夫人と共に事故死したと連絡を受けたのは昨夕のことだった。俺たちの両親は既になく、兄夫妻には後継者となる男児がいない。となれば、必然的に弟の俺が爵位と元実家であった屋敷を継ぐことになったのだが――。
　――キィイイイ、パタン。
「……勘弁してくれ！」