あぁあ~、そうだよそうだよ。バイアスって名前にも聞き覚えがあるわけだよ。ユーベルグルク王国騎士団の副官・バイアスといったらアルベルト様がもっとも信頼する最側近で、乳兄弟だもの。
 そして、前世の記憶を思い出したことで、頭の中がこれまでとは段違いにスッキリしていた。
 これまでは、薄く靄でもかかっているように頭の中が晴れず、常にぼんやりしていた。そのせいでいつもぼーっと魔法遊びをして、周囲からは不気味な子のレッテルを貼られていたのだ。
 だけど今、前世の記憶を取り戻したことで、パズルのピースがピタリと嵌まったみたいにしっくりしていた。
 ふふふっ、ここがあのゲームの世界だなんて、超嬉しい! 神様、ありがと――って、あれ? ……待てよ?
 内心でまだ見ぬ神様に感謝を叫びながら、途中ではたと気づく。
 推しの騎士団長の名前はアルベルト・ヴィッドランド。でもって、たしか私の家名もヴィッドランドじゃなかったっけ?
 これに思い至った瞬間、こめかみをタラリと冷や汗が伝う。