そのリリーが、上目遣いに俺を見て、小首を傾げながら口にした『お願い』の破壊力たるや凄まじい。
「アルベルト様、私からもお願いいたします。動物の飼育は、きっとリリーお嬢様の情操教育にも役立ちます。もちろん、お世話については私もしっかりとさせていただきます」
 クレアも、すかさず横からリリーに口添えしてきた。
 リリーとクレアの円満な関係が透けて見え、胸にホッと安堵が浮かぶ。
「そうか。迷いネコを保護してやったのか。リリーは優しい子だな」
「え? それじゃあ……」
 リリーの目が期待感にキラキラと輝く。
「ああ、そのネコ……ベルといったか。ベルは今日から我が家の一員だ」
 俺は是が否もなく、ネコの飼育を許可した。
「やったぁ! パパ、ありがとう!」
 パァっと花が咲き誇るように満面の笑みを浮かべたリリーが、テテテッと駆けてきたかと思ったら、両手でバフンッと俺の脛に抱きついた。ギューッと抱き締めて、スリスリとしてみせる彼女がなんとも言えず可愛らしい。