「おっ、美味いな。よくスープが沁み込んでいる」
 ……そりゃ、挽き肉のそぼろ状なんだもの。沁み込むまでもなく、スープとよく馴染んでいるよね……。
「味、濃くない?」
「ああ。今日は日中、騎士団の剣戟訓練に顔を出して指導で汗をかいたからな。少し濃い目のが食べたい気分だった。それに、こうしてパンに付けて食べるとなお美味い」
 パパの言葉に、怖さや怯えとは別の感情で目頭がジンッと新たな熱を持った。私はササッと手の甲で目もとを拭い、パパにはにかんだ笑みで告げる。
「……パパ、ありがとう」
「なに、リリーのミートボールは最高に美味い。礼を言うのは俺の方だ」
 大きな手がポンッと頭に置かれ、優しく前後に往復する。一週間前よりもぎこちなさがなくなったパパのナデナデを、私は目を細くして堪能した。
 ……私は目下、死亡エンド回避のために良い子になろうと頑張っている。だけど、死亡エンド回避うんぬんを別にしても、パパには嫌われたくない。好かれていたいな。
 そんなふうに思う、自分がいた。