俺の言葉にリリーはホッと安堵を滲ませた。
『さぁ。今日はもうクレアと寝室に下がって寝る準備をしなさい』
『はい、パパ。おやすみなさい』
『ああ、おやすみ』
 リリーはどこかぎこちなく答え、そそくさと食堂を後にした――。

 回想から意識が今へと戻る。
「……どうにもリリーが俺よりもお前に懐いているような気がしてな」
「それ、たぶん気のせいじゃないッスよ」
 あっさりと返されて、内心でやるせない思いに押し潰されそうになる。
「やはりそう思うか?」
「明らかにリリーちゃん、団長のこと怖がって……いや、怖がっているというよりは、嫌われないように必死って感じッス。察するに、新当主である団長の機嫌を損ねて、罰せられるのを怖がってるんじゃないッスかね。前は結構、ひどい扱いを受けてたようですし……」
 帳簿の確認の他、使用人への聞き取り調査にも同席し、リリーのかつての境遇を知るバイアスが重い口調で口にした。