脇に控えていたバイアスさんが、すかさず水が入ったコップを差し出す。
 わっ! さすがバイアスさん! 
「よし、リリーゆっくり飲むんだ」
 アルベルト様はバイアスさんからコップを受け取ると、甲斐甲斐しく私の口もとに宛がう。私はアルベルト様の介助を受け、コクンと喉を鳴らす。
 何度かコクン、コクンと繰り返してから、小さく頷いて「もう十分」だと伝えれば、アルベルト様はスッとコップを引いた。
 無事に喉が潤った私は、ホゥッとひと息ついて、視線を上げる。
 ヒッ! 視界に飛び込んできた、眉間の皺と絶対零度の視線に震え上がる。
「リリー、そのように怯えずとももう大丈夫だ」
 え? 今まさに私を怯えさせてる張本人に言われても、全然説得力がないよ……。
 おそるおそる見上げていたら、大きな手が頭に向かって降ってきて、ビクッとして首をすくめた。
 ……ぽふ。ぽふ。
 私の頭頂に置かれた手が、不器用に往復する。
 なんと、私は再び彼に頭を撫でられていた。驚いて固まる私に、アルベルト様がゆっくりと告げる。