私がすかさず同意したら、なぜかバイアスさんは苦笑して、チラリとパパの方を見た。
 パパは涼しい顔で次のブドウを剥いており、バイアスさんに目線を向けることはなかった。
「嬢ちゃんが気に入ったようでよかった。そのブドウは昨日アルザス地方から王宮に献上されたばかりで、まだ市場に出回っていない品だ。なんでも、量産が難しい希少な新種だそうだ」
 隣から聞こえてきた王様の台詞に目を丸くする。
 そっか! このブドウは王様とダグラスからのお土産だったんだ!
 そう言えば、パーティに公園で会った時と同じように護衛も付けず、ふらりとやって来たふたりが、パパになにか手渡していたっけ。ちょうどヴィオラの来訪と重なって、私は後からふたりに挨拶をしたからお土産のことを知らず、お礼もまだ伝えられていなかった。
「王様、ダグラス、美味しいブドウをありがとう」
「おう。喜んでもらえたようでなによりだ」
「どういたしまして。ブドウはまだまだあるから、どんどん食べて」