言われるままお口を大きく開けて、パパの指に摘ままれた瑞々しい果汁を滴らせたブドウをパクリと頬張る。芳醇な香りが鼻に抜け、口内で果汁が弾ける。果肉を噛みしめる度、甘さが口いっぱいに広がった。
「うまいか?」
「うん、おいしい! このブドウ、すごく甘い!」
「そうか。……ん? 口のまわりに果汁が付いている」
 パパは手指を手巾で拭きながら、ふと気づいた様子で私の口にもそっとナプキンをあててくれる。
「ありがとう、パパ」
 後ろのパパを振り返って告げれば、パパは柔らかに微笑んでポンポンッと頭を撫でてくれた。
 へへへっ。私はパパにされるこのポンポンが大好き。自ずと頭を摺り寄せるような恰好になった。
「……あり得ない甘さッス」
 円卓を挟んで私たちのちょうど真向かいに座り、先にブドウを食べていたバイアスさんがポツリと零す。
「うん! 私もこんなに甘いブドウは初めて!」
「まぁ、確かにブドウもめっちゃ甘いッスけど」