『わしが責任とな? そんなこと、わしはひと言も言っておらんが……、ん? というか、リリーはいつからわしが聖獣の王と知っておったんじゃ? 言っておったかのう……はて?』
 黒ちゃんは喜びを露わにし、ベルは訝しげに首を右に左に捻っていた。
 私は若干の後ろめたさを覚えつつ、とにもかくにもこの場が穏便に治まったことに、ホッと安堵の息をついた。

***

 リリーと移動動物園に行ったあの日から一週間が経った。
「パパ! おかえりなさい!」
 帰宅して玄関をくぐると、待ち構えていたような素早さでリリーが飛び出してくる。
「あぁ、ただいまリリー」
 俺が腰を低くし、両手を広げれば、リリーがバフッと飛び込んだ。
 その時、腕の中のリリーから心地のいい香りがふわりと立ち昇って鼻腔を掠める。
「……ん? この匂いは、ラベンダーか?」
「え? パパすごい、よく分かったね! 実は今日ね、ヴィオラと一緒にラベンダーでポプリを作ったの」
「ほう、そうだったか」
「これ、パパにあげる!」