『そうなんじゃ。不思議なんじゃが、あの時もなにかに導かれるように魔結晶を投げて放火し、今回も見えざる力に動かされるように……とにかく、やらねばならんという強迫観念に駆られていたんじゃよなぁ。うーむ。まるでシナリオでもあって、辿らなければならないルートに強制的に誘導されているかのようじゃ。もしや我は、なにかに操られているんじゃなかろうか』
 ……シナリオ?
 ……辿らなければならないルート?
 黒ちゃんの台詞を耳にして、こめかみをタラリと冷や汗が伝う。
「どうしたリリー?」
 パパが青褪める私に気付き、訝しんで尋ねた。
「う、ううん! なんでもないの!」
 慌てて答え、パパたちに黒ちゃんの台詞を伝えながら、私にはものすごく思いあたるところがあった。
「あら! やっぱりリリーちゃんとアルベルト様でしたわ! ごきげんよう」
 その時、突然、歩行路の方から声をかけられた。
「! ヴィオラ!!」
 見れば、ヴィオラが嬉々として手を振りながら、こちらに歩み寄ってくる。