『まぁ、たしかに。そなたが人間を襲ったとてなーんも得にはならんな』
 ……そして、驚くなかれ。
 なんと黒ちゃんこそが、ベルに不意打ちを食らわせて人間界に落とした張本人で長年の宿敵・闇の眷属だったのだ。
 ただし、詳しく聞けば『人間界に落とした』というのは単なる言葉のあやで、真相は『黒ちゃんの残留魔力が生み出した歪みから、ベルがうっかり落っこちた』であり、実際のふたりの関係は私が想像していた物騒なそれとは少々勝手が異なっていた。
 なにを隠そうこのふたり、茶の飲み仲間で麻雀仲間で、聖獣の国の王と長老の関係だそうだ。ちなみに長老というのは、聖獣の国にあって王様と権力を二分する政界のドンなのだそうだ。
 要はこのふたり、宿敵という名の仲良しこよしである。