「すごいなぁ。リリーはあっという間に人の心を動かしちゃったね。僕も将来のために、リリーみたいに人の心に響くスピーチができるようにならなくちゃ」
 私は別にインフルエンサーになどなりたくないし、そもそもホットドッグの集客を狙ってスピーチをしたわけではない。
 王様とダグラスの言葉は私にとって慰めとはならなかった。
「さぁ、リリー。人のことはどうでもいい。温かいうちに食おう」
「うん、パパ」
 ポンポンとパパに肩を叩かれて、私は食事を再開させた。周囲から注がれる好奇が滲んだ生暖かい目線は、意図的にスルーした。
『いやぁ、それにしてもうまかったのぅ~。そなたと来れば、このホットドッグが毎日食い放題とは! いやいや、でかした!』
 早々に食べ終えたベルの浮かれた声も、同様に聞こえなかったことにした。