義娘との今後を思い、ヴィッドランド侯爵邸へ向かう道中、俺のため息は尽きることがなかった。言うまでもないが、バイアスの言動も俺が大量のため息を吐き出すのにひと役買っている。

 ヴィッドランド侯爵邸に到着した俺たちは、玄関に馬車を横付けして下りた。
 幼少期を過ごした実家でもある屋敷を特段の感慨もなく見上げる。主を亡くした昨日の今日。屋敷内がいまだばたついているせいか、俺が事前に訪問を報せていないせいか、馬車が到着しても家人が応対にやって来る気配はなかった。
 高位貴族の屋敷にあって、これは珍しいことだった。少なくとも、両親が生前に切り盛りしていた頃は、事前連絡などなくとも、訪問者があればすぐに家令が駆けつけて応対に当たっていた。
 怪訝に思いつつ、自ら玄関の両開きの扉に手をかける。

 ――ドッカーンッ!

 その時、屋敷内で爆音があがる。
「爆発か!? 西回廊の方だ!」
 耳にした瞬間、俺は扉を開け放って音がした廊下に向かって駆け出していた。
 ……この蒸気はいったいなにごとだ!?