今日から騎士団長の愛娘!?～虐げられていた悪役幼女ですが、最強パパはわたしにメロメロです～

　すると突然、ベルがラグからスックと立ち上がったかと思えば、私にジトリとした目を向ける。
「どうしたの？　ナデナデはもういいの？」
　本来、魔力の充填だけなら、二、三回撫でてやれば足りるらしい。
　だけどベルは私に撫でられるのが大好きで、いつも蕩けた目をして長いこと私に体を預けている。
『もう十分じゃ。のんきに浮かれおってからに……わしはなにやら嫌な感覚がしてならんというに』
　……嫌な感覚？
「ベル、ちょと待って!?　今のって、どういう意味？」
　気になる言葉を残し、サッサと行ってしまおうとするベルを慌てて引き止めて、その真意を問う。
『分からん。ただ、なんとなく背中の毛がぞわぞわしよる。もっとも、そなたが他に気をやりながらそぞろに撫でておったせいかもしれんがな』
「え？」
　まさかの切り返しにキョトンとする。
『ふんっ。ちょいと散歩に行ってくる』
　ベルはひとつ鼻を鳴らし、私の横をすり抜けた。