驚いた私が「なんでそんなものが人間界にあったの?」と質問したが、これにベルは気まずそうに視線をスーっと逸らした。どうやら聖獣の王様といえど万能ではなく、知らないこともあるようだ。
「……なんだこれは」
 手紙に目を遠し終えたパパが呆れたように呟く。
「パパ、なんて書いてあったの?」
「石はこれまで蓄積したデータにはない、未知の素材で構成されているそうだ。最終的には、『地上にデータがないのだから、遠い宇宙からの飛来物・隕石なのだろう』と結ばれている」
「へ、へぇ」
 なんともザックリした調査報告だが、この世界は前世ほど科学技術は進んでいないのだ。宇宙開発に関しても、また然りだ。
『ふん。人間風情に魔結晶の分析など、できるわけがなかろうよ』
 床に丸まったベルが零した上から目線の発言はスルーだ。
 どうやらベルはいまだに『トイレ』の一件を根に持っているようで、ボヤ事件に関することになると毎回こんな調子だった。