パパの忘れ物(ほんとはジェームズの勘違い)に端を発した騎士団訪問は、この後も驚きと感動の連続だった。
 そもそも、騎士団長から直々に説明を受けながら施設を巡るなど、娘特権がなければ実現し得ない大盤振る舞い。最新鋭の設備を備える施設内は、案内されるどこもかしこも新鮮だった。
 パパが淡々と語る騎士団の裏話にはギョッとしたり、面白くて吹き出しそうになったりした。
「おっと。すまんが、そろそろ次の予定に向かわねばならん」
 だけど楽しい時間はあっと言う間に過ぎて、パパがトンッと私を地面に下ろす。
「パパ、午後のお仕事も頑張ってね」
 私は聞き分けよく頷いて、パパに手を振った。
「気をつけて帰れよ」
「うん!」
 パパとは正門の手前で別れ、ジェームズたちと馬車停めに向かった。
 帰りの馬車に乗り込んでも私の高揚は治まらなかった。
「リリーお嬢様は騎士団の見学がよほど楽しかったようですね」
「うん、最高に楽しかった!」