「ねぇパパ。ここに来る途中ね、馬車の中でクレアたちに色々聞いたの」
「ほう、いったいなにを聞いたんだ?」
「パパが小さい頃、どんなふうだったかを全部聞いたわ!」
「っ、おいクレア。いったいリリーになにを聞かせたんだ?」
 少し焦ったパパの声にクスクスと笑みがこぼれる。
「……嘘だろう? 騎士団長が甘い。俺は夢でも見てるのか?」
「いや、たぶん夢じゃねえ。俺の目にも砂を吐きそうに甘い騎士団長の姿が映ってる」
「我が目が信じられん。冷酷無慈悲な氷の騎士団長が蕩けそうだ……ってか、このギャップが一層怖えし!」
 こんなに優しいパパに対し、訓練場に残された面々は何故か震え上がっていた。
「いえ! むしろ、騎士団長のこのギャップがまた……!」
「ええ、逆に燃えるというものです!」
 ちなみに、一部の女性騎士はよく分からない炎をボーボーと燃やしていた。
 ふふふっ、ヘンなの。