一時間半ほどかけて、イヅナたちは山に囲まれたキャンプ場へとやってきた。バンガローに寝泊まりするため、初めてキャンプをする人も楽しめる。そのためか、小さな子どもを連れた家族連れがたくさんキャンプ場に訪れていた。
楽しそうにはしゃぐ子どもたちを微笑ましくイヅナは見た後、ゆっくりと目を閉じる。目を閉じてみれば、風が木々の間を通っていく音、近くを流れる川の水の音、遠くから響く鳥の鳴き声など、自然の中で生まれる音が全身を通して伝わってくる。
「気持ちいい……」
自然の中にいると、嫌なこと全てが流されていくような感覚を覚える。それが不思議だ。
「イヅナ、荷物をバンガローに運んだらちょっと散歩行かね?近くに花畑があるらしいんだけど」
レオナードに話しかけられ、突然現実に引き戻されたイヅナは肩を震わせる。しかし、花畑という単語にピクリと耳が反応した。
「どんな花が咲いてるの?行きたい!」


