「うまそうな肉だぁぁぁ!!」

牙を剥き出しにし、長い爪の手を伸ばし、彼らを八つ裂きにでもして食べるつもりだった。しかし、それは叶わなかった。

「うっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

悲鳴を上げ、その場に崩れ落ちる。喰おうとした刹那、体に激痛が走って一歩も動くことができなくなった。まるで全身の血管の中を鋭い針が動き、内臓を全て押し潰されるような痛みだ。

『ツヤ』

痛みで意識が朦朧とする中、誰かがあたしの名前を呼んだ。白い髪の女があたしの名前を呼んでいる。でも、その顔ははっきりと見えない。誰なんだ、お前は……。

そこで、あたしは意識を失った。

目を覚ました時、あたしの体は太い木に縛り付けられていた。目の前には喰おうとした男女。普段なら、きっとこんな縄くらい簡単に引きちぎれるのだろう。しかし、こんな酷い空腹では力が出せない。

「肉、あたしの、肉……」

よだれを垂らし、ただ目の前にいるおいしそうな二人を見つめる。すると、女性があたしに何かを手にしながら近付いてきた。匂いでわかる。巨大な鹿の肉だ!