あやかし戦記 裏側の世界へようこそ

三人目は「こんな戦い無理だ!」と選んだ武器を放り投げて逃げて行く。逃げ出したというのに、ツヤたちは引き止めようとはしなかった。

「中途半端な覚悟で来られても、ただ迷惑なだけなんだよ」

ツヤがそう言い、イヅナは薙刀を強く握る。そして四人目の名前が呼ばれた。チターゼだ。無表情のまま剣を握り締め、歩いて行く。

「始め!」

ギルベルトの声が響くと、ツヤはまた高速で移動する。チターゼは焦ることなく剣を構え、走り出す。するとツヤも追いかけてきた。ツヤとチターゼの距離はどんどん縮まっていく。

ツヤがチターゼに手を伸ばす。もう少しで捕まる、そう誰もが思った刹那、チターゼは素早く振り返ってツヤの手を思い切り斬った。ツヤの手から血が滴り落ち、よほど強い力で斬ったのか、手首は千切れそうになっている。これにはツヤも驚いている様子だった。

「おめでとう!」

「ようこそ、アレス騎士団へ!」

チェルシーとエイモンが笑顔で拍手を送り、チターゼは無表情のまま頭を下げる。鬼であり最強の戦闘員であるツヤに勝った者が現れたことに、イヅナたちは驚き、そして自分たちも勝てるのではと希望を抱く。