「ギルベルトさん、私は最前線で戦いたいです。苦手でも、妖と向き合う機会があるのは戦うしかない。私、妖とちゃんと話して共存できるようにしたいんです。甘ったれた綺麗事かもしれませんが、私はそうしたいんです。殺し合うなんて、嫌なんです」

あの時、チターゼに言えなかったことを口にできた。ギルベルトは「そっか」と残念そうに笑い、イヅナの頭を撫でる。

「気が変わったらいつでもおいで。……最終試験、頑張ってね」

「はい、ありがとうございます!」

イヅナは笑い、ペコリと頭を下げてギルベルトの部屋を出る。イヅナは知らない。イヅナがいなくなった後、ギルベルトが顔を赤くしながら「ますますほしくなっちゃった」と呟いていたことを……。



ギルベルトと話してから数日後、イヅナたち入団試験を受けている人たちはみんな、敷地内にある高い塔を登らされていた。塔にはエレベーターなどはなく、みんな息を切らせながら登っていく。

「これもッ!修行、だ!」

「……レオナード、暑苦しいからやめて」

レオナードにヴィンセントが注意し、イヅナも言いたいことはあったのだが、階段を登ることに集中する。