祖父がそう言うと、母がまた始まったと言いたげな顔をする。イヅナも苦笑していた。

祖父は妖や幽霊などが大好きで、その存在を信じている。幼い頃からイヅナも不思議な話を聞かされてきた。しかし、妖や幽霊といった存在は小説の中だけの話だとイヅナや母は思っている。

「昔はね、妖と人は共存していたんだ。でもある時、再び妖は人を襲うようになってしまい、人と同じ場所では暮らせなくなった。だから、人が滅多に来ない山や森に身を隠しているんだよ。だからーーー」

「うん、妖にも気をつけるから!そこまで心配しなくても大丈夫よ」

話がまだまだ続きそうだったため、イヅナは無理やり話を終わらせる。祖父はまだ何か言いたそうだったが、母が「お父さん、これ食べる?」と漬け物を持ってきたため、この話は終わりとなった。

「ごちそうさまでした!」

食べ終わったイヅナは素早く皿洗いを済ませ、歯磨きをして顔を洗う。そんなことをしていればあっという間に集合時間が近付き、イヅナはかばんを手に「行ってきます!」とリビングにいる家族に手を振った。