「ご挨拶が遅れてしまい申し訳ございません」



その挨拶だってお姫様抱っこしながらだなんて、Sランク失格だ。

そんな甘い甘い執事さんはわたし専属じゃないと絶対だめ。



「本日よりエマお嬢様の執事となりました。ハヤセ、と申します」


「うーん、他の執事はいないの?」



それは気まぐれな猫のように。
ふんっと鼻高々にお嬢様ぶってみる。

お、とでも言うように表情を変えた新しい執事さん。



「いるわけないでしょう。あなたを扱えるのなんか俺くらいしかいません」


「そ、そんなことないよっ!生意気だぞハヤセ!チェンジっ」


「まったく聞き分けが悪いお嬢様ですね。
いいから俺の言うとおりにしろ、エマ」



ほら、拒否権なんかないんだから。

優しくて甘くて、意地悪で乱暴で、よくわからない。



「あーっ!口が悪いぞっ!クビ!」


「いいえ、間違えました。
俺の言うとおりにしてください、お嬢様」



乱暴なのにすごくいとおしげに見つめてきたり。

それでいて丁寧なときは案外いじわるな顔をしていたり。


それがわたしにしか扱えない、(ド)Sランク執事なのです。



「エマお嬢様、せーの、」


「えいえいっ、おーーーっ!!!」



両手を天井に伸ばして、お姫様抱っこしてくれているハヤセの分もこぶしを掲げた。


この先どんなことが待ち受けようとも、ふたりで頑張ろうぜ!!


───ってね。