「また遊びに来るよ。アリサがいないときにでも」


「うんっ!でもお姉ちゃんも一緒でいいのに!」


「いやそれはキツい。あいつのビンタのほうがエマより痛いんだよ」



どうやらお姉ちゃんは早乙女に容赦ないらしく、彼は少し怯えている。

あれから無事に婚約は破棄となって、わたしはお父さんからはとくに何も言われなかった。


それはお姉ちゃんが『私に任せて、エマ』って、わたしが大好きなお姉ちゃんで言ってくれたのと、彼のおかげでもあるんだろうなって。


だからこの男には感謝しかない。



「これからも色んなことがあるかもだけど大丈夫だよエマ。
お前には何よりも心強い誰かさんと、泣き顔が可愛いお姉ちゃんと、早乙女財閥の跡取りが付いてるから」


「うん!……え、泣き顔が可愛いお姉ちゃん…?早乙女、お姉ちゃんを泣かせたの…!?許せん!ちょっ、あっ!」



満足そうに彼はマンションを出て行った。

だけどわたしの執事はいなくなったわけで…。ぽつんと1人取り残される朝7時。



「……わたし執事なんかいらないもんっ」



そんな強がりを口に出して、テーブルに並べられた朝食を見つめる。



「どれから食べようかなぁ…」



オシャレなボートバスケットに入れられたパンは選び放題。

フルーツだってジャムだって、たくさんの種類が揃えられてる。