どうしてそんなことしてくれるの。
どうしてそんな顔でわたしを見つめてくるの。
「どうして、泣いているのですか」
つらいからだよ。
苦しいからに決まってる…。
なんで聞いてくるの、わかってるくせに。
意地悪だよ、あなたはいじわるすぎる…。
「気持ちを言ってください。でなければ俺には伝わりません」
「……だから、言ってる…っ」
「言ってません。あなたが自分を卑下する言葉は、俺には何ひとつ届かないんですよ」
じゃあ何なら届くの……?
どんな言葉ならあなたは聞いてくれる…?
どんなふうに伝えれば、わたしの話を、聞いてくれるの…?
どうすればお姉ちゃんのほうに行かないでくれる……?
「…エマお嬢様、」
こうして名前を呼んでくれることがどんなに嬉しいか知ってる…?
最初からハヤセだけは違ったんだよ。
だからあなただけはそうじゃないって、本当は今もずっとずっと思ってた。
あぁ───…止まらない。
涙、ぜんぜん止まってなんかくれない…。
「ちゃんと…するから……、」
「…なにをですか?」
その声は、やさしい。
わたしだけを見つめてくれる瞳は変わっていなくて。
「勉強も、ちゃんとする、茶道だって頑張る…、フランス語も、ハヤセの助けは貰わない……」



