俺の言うとおりにしてください、お嬢様。





比べられてきたというか、わたしは何をやっても駄目だったから、自然と期待の的はお姉ちゃんで。

格差がすごくて、それでもお姉ちゃんは優しい人だったから小さな頃のわたしには劣等感なんか無かった。


それくらいお姉ちゃんは中身までもすごい人なの。



「そういえばわたしって許嫁とかもいなくてねっ」



柊家にとっての娘はエマじゃなくてアリサ。

小さな頃から許嫁が決まってたのもお姉ちゃんだけ、わたしはそんな人すらいなかった。


でも高校生になってできたと思えば、それはお姉ちゃんからのおさがりのようなもので。

普通なら有名財閥の娘が公立高校に通う許可が下りることだってありえないもん。


でもありえちゃったのがわたしだ。



「…あのね、苗字も変えさせられるところだったんだよわたし」


「苗字?」


「うん。公立高校に通ったら、柊じゃなくするって言われててっ」



恥、だったんだろうなぁ。

わたしは柊家にとって、お父さんにとって。


そもそも何かの間違いでできた子供だったんだもん。

隠すべき存在として、お父さんの醜い欲の結果で産まれちゃった子がわたしだ。



「っ、…わたしはハヤセにとっても、お姉ちゃんの代わりにすらなれなかったんだね…」



ふわっと包み込んだ両手が涙を拭ってくれる。