「確かに誰が見ても俺が仕えるには相応しい方です。アリサ様は」


「……うん……っ、」


「あれ?どうして泣いているのですか?」



その質問だいっきらい。

ハヤセだって大嫌い、そんなこと言うハヤセなんかわたしからお断りだ。


お前に泣かされてるの、お前だよお前。


だからもうわたしに関わらなければいいのに…。どうして今だって両手で逃げ場を無くすように塞いでくるの…?



「…どいて、」


「嫌です」


「退いてっ!」


「退きません」


「なんで……っ、退いて、もうお姉ちゃんのほうに行けばいい、」


「───わかりました、行きます」



え───…。

思わずぎゅっとハヤセのタキシードを掴んでしまった。



「…エマお嬢様?」


「っ…、」



嘘だよ行かないで、どうして行っちゃうの。
ハヤセもわたしのこと嫌い……?

わたし、なにかした…?

わたしなりに毎日がんばってたんだよ、あんなのでも。



「エマお嬢様?」



覗き込むように見つめてきた黒髪がサラッとおでこに触れた。

そうやって聞いてくるのだってズルいよ…。



「お、お姉ちゃんは…すごいもん、」


「はい、そうですね」


「うん。昔から比べられてきたっ」