熱……?
あ、そういえばあった。
早乙女が夜中からずっと看病してくれて、でもそれからはあまり覚えてない…。
目が覚めたら熱は引いていて、誰か来たのかと聞いても早乙女は『ん?とくに?』なんて言ってたし。
「え、“俺に”……ってことは、ハヤセが看病してくれたの…?」
「…やっぱり覚えていないんですね」
「……ご、ごめん…」
え、そうだったの……?
冷えピタにゼリー、スポーツドリンク。
それは熱が出た夜中には用意されてなかったけど、熱が引いた朝にはベッド脇に置いてあって。
早乙女が買ってきてくれたのかなぁって思ってたけど……もしかしてハヤセだったの?
「は、ハヤセありが───」
「エマお嬢様、俺はずっとアリサ様の執事でいてもいいですか?」
ピタリと感謝の気持ちは止まった。
止まったというよりも、言わなくていいかなって思った。
だってそんなこと言ってくる男に“ありがとう”なんて、勿体ない言葉すぎるもん。
いてもいいですかって、そんなの“いたい”って言ってるようなものだ。
なんでわざわざ言ってくるの……。



