もう宝箱とか知らないっ!!
鍵だって逃げてる途中で落としちゃったもん…。

これがもし去年だったならば、やっぱり執事を辞めさせる理由になっちゃってたかも。


でも今年の執事は早乙女だ。

だけどそんな早乙女ともはぐれて1人の今。



「貞子怖すぎる……っ、お姉ちゃぁぁん、みんなぁぁ、どこにいるのぉぉぉ……」



霊感は無いと思ってた…というより無ければいいと思ってたのに、まさかの見えてしまった。

いや、触ってしまった……。



「…どうしよう、どうしよう、」



下手に動くわけにもいかないし、今頃みんな探してくれてるかもしれないし。

でも怖くて動けないし……。


ぎゅっと踞っていると、ガチャッとドアが開いたような気がする。



「さ、貞子きたぁぁぁぁああぁぁっ」


「───俺です、エマお嬢様」


「俺って誰っ!!貞子の一人称は俺なの……!?」


「ハヤセです」



井戸から這ってきたわけでもなく、ピシッと着付けられたタキシード。

広がったフローラルの匂いに一瞬にして安心が包んでくれる。



「ハヤセっ…!!」