皿とフォークを集める動きがふと止まった。
そいつは何を考えているのか、ソファーから立ち上がって脱衣場とは反対方向へ行こうとするものだから。
「どこに行くつもりだ」
「いや?嫁の様子でも見てこようかなって」
「やめろ、やっと落ち着いて寝たところなんだよ」
敬語なんか辞めてやる。
俺だって本当はずっとこうして睨みを効かせたかった。
だからある意味、今がチャンスなのかもしれない。
「…エマお嬢様と本当に結婚するつもりなのか」
「どーだろ。跡取りとしては結婚したほうがいいんだろうけど、まぁアリサが戻ってくることが一番かなってとこ」
その言葉を聞いて俺はホッとした。
柊 アリサは意識を戻して、今はリハビリ中らしく。
エマお嬢様が2年生に上がる年、形上では留年という形になるが3年生として戻ってくるだろうと理事長は言っていた。
だからこれでエマお嬢様の結婚はなくなる───と。
「って、さっきまでは思ってたんだけど」
思わず視線を移してしまった。
そんな俺の動揺した顔が面白かったのだろう。早乙女はまた違った顔で楽しそうに笑った。



