「エマお嬢様、」



返事をする代わりに頬をすり寄せてみた。


わたしは来世は猫になりたいって言ってたけど、前世が猫だったりして…。

犬って早乙女には言われたけど本当のところはたぶん猫だ。



「…頬に、キスしてもいいですか」


「っ、」



思わず息を飲むように身体が硬直。

それは嫌とかじゃなくて、さっきの情景を少し思い出しちゃったから。


それにドアの先、廊下の先のリビングに奴はまだいるのだ。



「わ、わたしお風呂入らなくちゃっ」


「明日の朝に入りましょう」



こんなことハヤセに言えないもん…。

本当はさっきのキスをハヤセのもので消してほしいって思ってた。

だから今そう言われてすごく喜んでる自分がいる。


こんなお嬢様なんか気持ち悪いよね…?

はしたなくて引いちゃうでしょ…?



「エマお嬢様、」



させてください───と、言ってくる。

もしかしてわたしと同じ気持ちだったりする…?そう自惚れちゃっても許してくれる…?



「ハヤセ、あのねっ」


「いいからさせろ」


「えっ」



あっ、また出た……!!

また出たっていうか、故意的に出してるのはハヤセなんだけど…!



「んっ、」