「ハヤセっ、ハヤセ、」
「エマお嬢様、もう今日はお休みましょう」
「うん…っ」
初めてのお姫様抱っこがこんな状況でされちゃうなんて…。
でもハヤセに触られていると、怖さもだんだん消えていく。
「熱があるみたいなので先にお嬢様を寝かしつけてきます。
あなたは今日は俺の部屋を使ってください」
「執事って感情を表に出しちゃ駄目なの知らない?」
「…知っていますが」
「いま鏡見てこいよSランク執事。たぶん笑っちゃうだろうからさ」
ハヤセ、いまどんな顔してるの…?
ぎゅっと抱えられているから顔がよく見えない。
彼は返事を返さないままわたしの部屋へ向かって、そのままベッドに腰を落とした。
「…泣かないでくださいエマお嬢様。あなたが泣いていると俺も辛いんです」
そういえばわたしが泣いたのって初めてかも…。
いつも賑やかで笑ってるやつだったから、だからハヤセだって驚いちゃってる。
「俺はここにいますから安心してください」
「わたし、結婚したくない、…あいつとなんか嫌だ……っ」
「…俺も…、……させたくない」



